塾にはいつから行けばよいか? 高受編
結論から言うと、高校受験の塾には中2から通うことをおすすめします。
では、どうしてそういう結論になるのか説明していきましょう。
受験開始の低学年化に乗る必要なし
学力が学習時間に比例して上がるのであれば、受験勉強は早く始めれば始めるに越したことはないでしょう、。
とはいえ、わたしの(そして大人全員の)経験上、学力のグラフが正比例の右肩上がりになることはありません。学力が上がるのは、学習を始めたときと、結果が出る直前が最大値となります。よって、効果を最大限に産むには、その学習を始めてから結果が出るまでの間に、くぼみが出ないようなグラフを作ることがよいということになります。
前回(塾にはいつから行けばよいか? 中受編)も書きましたが、「いつから通えばいいですか」という質問を塾にしてもあんまり意味がありません。
返答は「今すぐはじめましょう! お父さん(お母さん)」だからです。
塾は一種の不安産業ですから、保護者の「このまま勉強しないでいたらうちの子どうなっちゃうのかしら」に、つけこみます。つけこむというと聞こえが悪いですが、塾の先生としては自分の塾のサービスをフルで味わってもらいたいと考えるので、「いつからはじめたらいいですか?」に対する返答は「すぐにうちの塾に入ってください」となります。
保護者の入塾意欲が高まっているこの機会(ビジネスチャンス)を逃して「もっと先の学年でも大丈夫ですよ」というのはありえないわけです。わたしが仕事で保護者の対応をするときも同じです。
中学入試の各塾はこぞって小学一年生からのコースを準備していますが、受験勉強を低学年からはじめる必要はありません。小一からのコースは塾がコスト回収のために作ったコンテンツにすぎません。
理念に基づくものではありませんので、それに踊らされる必要はないでしょう。
メディアは中学受験の激化を煽っていますが、小学校低学年のうちは受験科目以外の習い事をするのがよいでしょう。
高校受験塾に通い始める時期は?
さて、高校入試の話に戻りますが、高校入試においても各塾は小5からのコンテンツを準備しています。
都内は中学受験率が高いとはいえ、8割は公立中学校に進むわけですので、塾も中学受験だけを扱っていては、残り8割の小学生を手放すことになってしまいます。
小5からの高校受験対策は、中身はともかくとして、そのコースが設置された理由は塾の利潤追求にありますので、受験費用をコンパクトに抑えたいのであれば小学生からの高校受験対策は不要と考えて結構です。
では、中学校に入ってから高校受験対策をするとして、いつから塾に通うのがよいでしょうか。
高校受験塾に通い始める時期は?
① 小5から
② 中1から
③ 中2から
④ 中3から
⑤ 中3夏から
⑥ 塾には通わない
このあたりが選択肢として挙げられるでしょうか。
このうち、①については、上で述べたように高校受験対策としては不要です。⑥もこの記事の趣旨とはそれますので、今回はあまり触れません。
高校受験塾に通塾しはじめる時期として割合が多いのが②の中1からと、④の中3からです。これは塾がターゲットとする顧客層(どういった高校を目指す家庭か)によって、どちらが多いかは異なります。
志望校のレベルによって通塾開始時期は異なる?
通塾しはじめる時期は、目指す高校によって異なってきます。目指す高校をレベル別にわけてみます。
1. 最難関高を目指す
2. 早慶附属高を目指す
3. 都立二番手高を目指す
4. MARCHの附属高を目指す
5. 都立の中堅高を目指す
難度が高い順に並べてみました。ここでいう「難度」は偏差値とほぼ同じだと思ってよいです。偏差値だけが学校を測る基準だとは思っていませんが、塾選びにおいてはわかりやすい指標です。
1. 最難関高を目指す場合
まあ大方の予想通り、「1」の「最難関高を目指す」から順に入室時期は早いほうがよいと言えます。最難関高とは、ここでは開成高、筑駒高、筑附高、日比谷高などの高校を指します。これらの高校に合格した生徒の通塾開始時期で最も多いのが①(中1から)で、次は④(中3から)です。
中3からの通塾で最難関高に合格してしまう生徒というのは積んでいるエンジンが違います。いわゆる地頭がよい、というやつです。こうした生徒さんたちは内申(通知表の成績)をとるのに苦労しません。中学校の試験勉強は学校にいるうちに終わらせ、そう苦労せずに高い内申を取ることができます。オール5近くは提出物や態度もケアする必要がありますので、なかなかに困難ですが内申40ぐらいは男子生徒でもたいがいキープしています。
2.早慶附属高を目指す場合
次に早慶附属高を目指すグループですが、こちらは高校受験をする生徒にはとても人気があります。早慶附属高は中学受験や大学受験よりも競争が(相対的に)厳しくないうえ、早稲田大学や慶應大学に入学できればその先の就職も安心できます。親が学力を担保にしてリスク回避を考えたときに選ぶ学校としてはそうとうによい選択だと言えます。
人気に比例して入試もかなりの難度ではありますが、早慶附属高は国語、数学、英語3科目の受験です(作文、小論文、面接もありますがこの記事では説明を割愛します。)。理科、社会がある開成高や国立大附高よりも必須科目が少ないというメリットがあります。
受験問題の難度は傾向は異なるものの、最難関高に匹敵する難しさではありますが、前述したように科目数が少ないですので、方法によっては偏差値50からの早慶高合格も大いにあると考えてください。
早慶附属高を本気で目指すなら、中2から、遅くとも中2の夏からは始めたほうがよいでしょう。また、通塾する塾は都立に特化した塾を決して選んではいけません。早慶附属高を目指すなら、早稲田アカデミー、サピックス中学部のテキストとカリキュラムが整っています。早慶附属高受験に適していないのは ena、栄光ゼミナールです。
中2からとお伝えしたのは高校受験の主要科目と言える英語と数学の最重要分野は大半が中2の範囲から出題されるからです。中3からの通塾では、その最重要分野の習得に時間がかかり、実戦演習に取り組む時間が確保できないません。
3と4.都立二番手高、MARCH附属高を目指す場合
都立二番手高とはなんともまあざっくりした書き方ですが、都立を難度別に大別すると以下のようになります。
進学指導重点校…日比谷、西、国立、八王子東、戸山、青山、立川
進学指導特別推進校…小山台、駒場、新宿、町田、国分寺、国際、小松川
進学指導推進校…三田、豊多摩、竹早、北園、墨田川、城東、武蔵野北、小金井北、江北、江戸川、日野台、調布北、多摩科学技術
このうち、日比谷は別格です。開成や筑駒に匹敵する難度の学校と言ってよいでしょう。
日比谷以外の進学指導重点校は難度でいうと2と3の間あたり、旧学区トップ校ばかりです。進学指導特別推進校が3あたりの難度でしょうか。都立高の難度を私立高と比較するのはいささか乱暴なのですが、わかりやすさを重視して3と4の難度は同じくらいと考えます。
最難関高、早慶附属高の入試問題と、都立二番手高、MARCH附属高の入試問題では難度に大きな差があります。最上位校のための勉強をしてきて、それに準ずる高校に合格することは難しくありませんが、都立二番手とMARCH附属高の対策だけをしていては、最上位校には手が届きません、それほどにこの2グループの差は大きいと思ってください。よって都立二番手高、MARCH附属高を志望する場合も、早慶附属高や開成国立を目指して学習するぐらいの心構えは必要です。つまり通塾開始時期も中2を検討するのが準備としては望ましいです。
念のために、「MARCH」は以下の5校の総称です。
M…明治大学
A…青山学院大学
R…立教大学
C…中央大学
H…法政大学
それぞれ附属高は以下の通り(高校からも入れる学校、首都圏限定)
M…明大明治、明大中野、明大中野八王子
A…青山学院高
R…立教新座
C…中大附、中大杉並、中央大学高、中大横浜
H…法政大高、法政第二、法政女子、法政国際
5.都立中堅校を目指す場合
最後に「5」の都立中堅校についてですが、入試問題は都立共通問題を扱う高校で、かつ大半の生徒が大学進学をする高校を「中堅校」と定義したいと思います。都立共通問題はその名の通り、大半の都立高受験生が受ける問題ですので、こう言っては何ですが拍子抜けするほど簡単です。これらの高校を志望するのであれば、通塾期間は相当に少なくて済みます。通知表の成績を安定させ、あとは典型問題を解くのに力を注ぎましょう。もともと通知表がよいのであれば、「6」の「通塾しない」という選択肢もあるかもしれません。
それでもお試しで夏期講習ぐらいは受講してみてもいいかもしれませんね、(あんまり好きな戦略ではありませんが)無料のキャンペーンをはっている塾もありますので…。
というわけで、高校受験では、「中2からの通塾」を軸にして計画を立ててみてはいかがでしょうか。
【次回更新日】
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