塾にはいつから行けばよいか? 中受編

周りが通い始めてからではもう遅い? 
そんなことはないですが、情報だけは集めておきましょう。

「塾にはいつから通えばよいですか?」

「塾にはいつから通えばよいですか?」
この質問を進学塾にしてもあまり意味がありません。返答は大体ひとつだからです。
皆さん早めに動いてますよ。今すぐにでも始めましょう

入塾相談をしにきている保護者は「うちの子このままで大丈夫かしら。勉強させたほうがいいんじゃないかな」と大なり小なり思っていますので、その不安をくすぐるように営業トークをします。わたしも仕事のときはなるべく早く入塾するように勧めます。

中学受験の場合は一般的には小4からの3年計画が無理のないスケジュールだとされています。遅くとも小5からは始めたほうがよいとも言われています。
本気でやるならリミットは小5の夏です。ただ、小5の夏から始めて難関校に合格できるのはもともと自分で学習していて、かつ地頭がよいお子さんに限られます。

各塾のカリキュラムを比較してみる

各塾がどのようなスタンスでカリキュラムを構築しているのか、5大塾(栄光ゼミナール、サピックス小学部、日能研、四谷大塚、早稲田アカデミー)のホームページやパンフから探ってみましょう。

SAPIX(サピックス)小学部

FAQ(よくある質問)を確認すると、小1から小3は思考力の土台作りの学年であると定義していることがわかります。
小4のカリキュラムに「本格化する授業を通して、発想と思考力を高める」と書かれていることからも、4年生からの3年計画で合格に導くカリキュラムになっていることがわかります。小4の算数のカリキュラムをみると、受験でつかう道具が網羅されているので、この時期からの入室ならば無理なく学習がすすめられそうです。(「中学受験にかかるコストはどれくらい? お金編②」でも言及しましたが、SAPIX小学部は早々に募集停止になってしまう校舎・学年があるので注意してください

サピックスは「復習主義」をうたっていて、FAQにも「同じ分野を何回も繰り返して学習します」と書かれていますが、同じ分野をだんだん発展的に学習していくので、入室時期が遅くなるほどついていくのは厳しくなります。(どの塾も大なり小なりそうでしょうが)
たとえば小6のカリキュラムでは「数の性質」「平面図形」「割合」「速さ」…と描かれています。これは小5のカリキュラムにも載っている単元ですが、小6の上位クラスでは前置きなしに実戦練習に入るようです。

栄光ゼミナール

栄光ゼミナールは小1・小2を「ジュニアコース」、小3・小4を「中学入試準備コース」、小5・小6を「入試対策コース」(難関私国立・私国立・公立中高一貫でコースがわかれる)としています。中学入試のカリキュラムは2年サイクルで構築しているようです。
詳しいことはカリキュラムを見ないとわかりませんが、栄光ゼミナールのカリキュラムはホームページからもパンフからもわかりません。保護者はカリキュラムに興味などないと思っているのか、カリキュラムに興味のない保護者が栄光ゼミナールを選んでいるのかどちらでしょうか。

栄光ゼミナールの教室に行って「カリキュラムが知りたいのですが…」とうかがうと、お渡しできる正式なものはないとのこと。極太のバカでかいフォントで書きたいのですが、保護者に渡せるカリキュラムがない塾ってどうかと思いますよ。まさか大手でそんな塾が存在するとは思ってもみませんでした。

かわりにテキストの目次のコピーをもらいました。あ、これは中学受験新演習のテキストですね。首都圏模試系列のテキストですので、首都圏模試のレベルに最適化されている問題集=カリキュラムだと考えていただければよいと思います。
中堅校の受験に適した問題集ですので、難関校を受験する小学生には物足りないでしょう。というより、この問題集だけでは難関校の受験対策として不十分です。

早稲田アカデミー

早稲田アカデミーの中学受験コースは、私国立中を考える場合、小1・小2「スーパーキッズコース」、小3「ジュニアコース」、小4・小5・小6「Sコース」と構成されています。受験勉強の本格化は小4からはじまるととらえていることがわかります。
ちなみに公立中高一貫校受検コースもあって、こちらは小5からはじまります。お手軽に中学受験をしてみたい層には負担が軽くなるコースを設定しているあたりは設計の巧みさが光ります
中学受験ライトユーザー層も多い公立中高一貫校受検組(そんなに甘くねえぞ!)のボリュームは無視できません。また、この層を取り込むことで、もし中学受験に失敗したとしても高校受験コースへ誘導することもできるます。
カリキュラムは先述したSAPIXとあまり変わりがありません。尋常ではなく早いカリキュラムのSAPIXに遜色がないあたり、よく研究しているのですね。

日能研

小1・小2のコースを「ユーリカ! きっず」と名付け、教科の枠を取り払った総合的に指導しています。国語算数理科社会とわけずに、年間のカリキュラムを組み立てています。
「教科という学び、系統学習は4年生からで充分」というスタンスです。「日能研の低学年では、ファンタジーを大切にした学びを展開しています」うん、よくわかりませんが「シカクいアタマをマルく」したい意気ごみだけは伝わってきました。

中学入試の学習が本格的になるのは小4からですが、ホームページの記載によると「系統学習の中で人類の叡智を学ぶ」「系統学習を支える日能研独自の〈学習プロフィシエンシーシステム〉」などの難解な理念が書かれています。このホームページは読めば読むほどなんだかわからなくなるので、詳細だけが知りたい場合には時間を無駄にせず、校舎でお話を聞くほうがよいでしょう。

四谷大塚

四谷大塚は小1~小3をリトルコースと呼んでおり、「学ぶ楽しさを知る。」時期と位置づけています。使用する教材も「漢字ビンゴ」「反対語かるた」「すすめすすめ電車でゴー!」など、楽しそうなものが多いです。
一方、小4からは「予習シリーズ」と呼ばれる教材を使用した授業が始まります。著名なテキストである予習シリーズはWikipediaにも載っています。

1960年に初版が発行されて以来、50年間に渡って改訂が続けられており、中学受験用の教材として最も古い歴史を持つ。
日能研やサピックスが在籍生だけに販売しているのに対し、予習シリーズは通信販売および中野校舎窓口で誰でも購入できるのが特徴である。このため、四谷大塚とは無関係の塾・個別指導教室においても広く使われている。

Wikipediaより

名前の通り、生徒があらかじめテキストを見て思考することを前提にしたテキストです。ここが他の塾とまったく異なる点です。
Wikipediaの記載の通り、多くの塾で使用されています。ただ名前の通り「予習」を前提として使っている塾ばかりではありません。わたしが以前教えていた塾でも予習シリーズを使っていましたが、予習不要で、解説 ⇒ 演習 ⇒ 宿題 の形式でカリキュラムを組み立てていました。

小6からの中学受験もあり?

各塾のカリキュラムを見ると、小4から受験に直結する問題を扱っていることがわかります。
特に算数は小4生で得る知識で解ける問題も入試では出題されます。学校のテストはいつも満点だから大丈夫だろう。と甘く見てはいけません。
難関校を目指すなら小4から受験勉強を始めるのがベストでしょう。
詳細をここに出すことはできないのですが、私のもっているデータでも難関校合格者のうち、一番割合が多いのが、小4に入室した生徒です。次に多いのは小5ですが、割合はかなり下がります。

当たり前すぎる結論なので、もう少し続けます。

現在の中学受験は多様化がすすんでおり、偏差値だけが尺度ではなくなっています。
そう考えると、偏差値の高さ以外で中学校を選択する場合、始める時期をセオリー通りにする必要はありません。むしろ小5や小6で受験勉強を始めたほうが中だるみもせずコンパクトに受験をまとめられて家庭の負担も少なくなるといえます。

小5、小6で受験勉強をはじめるときは、通わせる塾のカリキュラムをしっかり見てください

中途半端な時期に入室すると、追いつくためにオプションを取ったり、個別指導を併用したりする必要があるかもしれません。入り口でかなり負荷がかかると受験自体がいやになってしまうかもしれません。小5からの受験勉強を考える場合は、必ず通いたい塾のカリキュラムの区切れ目を見極めてから入室しましょう。

大手集団指導塾以外、という選択肢

それから、集団塾以外の選択肢も考えてみてください。
小5、いや小6から受験勉強を始めるなら、子供に最適化したカリキュラムを作ってくれる個別指導がいいかもしれません。個別指導は単価は高いですが、うちの子だけをみて教えてくれるので、よい先生に巡り合えれば飛躍的に成績が伸びることもあります。

もう一つの選択肢としてはチェーン展開していない小さな塾もおすすめできます。
教場が一つしかないような小さな塾は、塾長の熱意がダイレクトにその教室に伝わります。
校舎間の差もありません。
また、一人の生徒をどう面倒見るかが次の年の評判にもかかわるので、どんな生徒も決して見はなすことはないでしょう。

中には熱意が薄れて惰性で経営されている町塾もないとは言えませんので、入室前にはかならず塾長との面談をお願いしてください。

【 次回更新日 】2021年6月25日(金)