内申悪玉説に物申す
東洋経済オンラインに「実録!公立中学の不透明な「内申」と高校受験」という記事が載っていました。
他人の記事を引用して書くのはあんまり好きではないのですが、ちょっと一方的にすぎる気もしたのでコメントしたく思います。
中学受験が増えるのは内申点をとるのが難しいから?
記事のサブタイトルに「「中学受験」がコロナ禍でも増えている納得理由」と書かれています。
記事の著者(沢木 文さんという方)は「内申点をとるのが難しいので、実態を知った人は中学受験に向かっていく」と書いています。
内申と内申点の違いはちょっとおいておきます。とりあえず内申は通知表の5段階の成績のことだと思ってください。
「内申点をとるのが難しい」これは事実です。
ただ、「実態を知った人は中学受験に向かっていく」というのは、言い過ぎのように思います。
「実態を知った人の一部は中学受験に向かっていく」ぐらいですよね。
中学校の内申については中学受験率が微増している主因ではありません。
内申は保護者世代のほうが不透明だった
内申(要するに通知表の成績)を取るのが困難なのは保護者世代(40代~50代)のころも変わりません。
むしろ、通知表の不透明さは保護者世代の頃のほうが際立っていました。
(実際わたしも中学校の授業態度は悪かったので、特に先生に嫌われていた音楽は、テストで満点近くを取っていても「2」がついていました。先生ごめんなさい)
わたしもそうですが、保護者世代が中学生だった頃は「情報開示」という観点が常識ではありませんでした。今は違います。子供の成績があまりにもおかしいようであれば、情報開示を求めることができます。中学校の先生方もそのことを知っているので、基準をある程度はっきりさせて成績はつけています。
(この基準が先生によって異なるので、たしかによい内申を取るのは難しい面もあります)
今の中学校は絶対評価で内申をつけている
今の中学校の内申は絶対評価でつけられています。
保護者世代の通知表の成績は
5と1が7%
4と2が24%
3が38%
と相対評価でした。
しかし、現在は絶対評価になっており、理論上は「みんな5」とか「みんな3」などの数値をつけることも可能になっています。まあ、指導が入るのでまずありえませんが。
5段階それぞれの % が決まっていないからこそ、成績をつける先生方は評価基準を明確にしなければなりません。ちなみに評価基準はおおむね学習指導要領にのっとっているそうです。
私立の「抑え」に内申はいらない
くだんの記事では
「都立に不合格だったときのための“保険”として私立高校の合格内定をとる際も、内申点によって評価される。私立高校を第一希望にしたとしても、内申点を参考にする学校は増えている」
と書かれていますが、
抑えの私立(言い方が失礼なので「安全校」などと表現することもあります)の内定をとるのに必要な基準は内申だけではありません。
Ⅴもぎなどの模試の偏差値でも合格内定の基準を満たすことはできます。
通知表の成績が取れないのならば、模試でよい成績を収めれば「安全校」の合格内定は得られるのです。(「合格内定」という言い方もしませんが、わかりやすいのでそのままにします)
ちょっと文句ばっかり書いてしまいました。この記事、すごくいいことも書いてあるのです。読んでみてください。
ただ、「23区在住の10人の保護者に話を聞いた。」
とあるのですが、ちょっとデータが少なくないですか?
どういう10人でしょうか。東洋経済の読者ばかりなら意見は偏ってますよ。
この著者さん(沢木 文さん)、すごくいいことおっしゃっています。以下は共感したところなので、引用いたします。
「度重なる先生の暴力といった不祥事も、学校内における「絶対的な強者」と「隷属せざるをえない弱者」の関係が背景にある」
東洋経済オンライン
内申については今後くわしく書く予定ですが、ちょっと緊急で投稿してみました。
公立中学校の先生、がんばってますよ。