中学受験のコストとその報酬

受験にかかるコストについて、お金編、時間編と記事にしてきました。
これまでの記事で書いた通り、「コスト=悪」ではありません。

中学受験のコストをまとめてみた

お金、時間ともに中学受験にはコストがかかることは間違いありません。
これまで4回の記事で書いてきた「中学受験のコスト」をまとめてみましょう。

A=進学のためにかかったコスト
① 塾代。
② 受験勉強のために費やした時間。
③ 受験勉強のために習い事をやめた、中断した。

=進学してからかかるコスト
① 学費
② 交通費
③ 通学時間

中学受験にはコストに見合う報酬がある?

もちろん中学受験にはコストに見合うだけの「報酬」があることは間違いありません
中学受験をしたことで得られる報酬はどのようなものがあるでしょうか。

C=どんな報酬があるか。
① 憧れの中学校に進学できる。
② 子供の成長(学力の向上、精神的な成長)。
③ 公立中に進まないですむ。

A + B ≦ C となるのが理想です。
というより、上の数式をイメージできないなら中学受験はコストに見合わないので、高校受験に切りかえたほうがよいでしょう。

A、Bのコストについてはあらかじめ、ある程度は予想できると思います。
Cの報酬がどの程度あれば、つり合いがとれるでしょうか。

Cのうち「子供の成長」についていうと、中学受験で子供は間違いなく成長します。これは保証できます。
子供は高い壁を乗り越えることによって、飛躍的な成長を遂げます。
中学受験をする/させることで子供の成長を期待するのであれば、たとえ不合格に終わったとしても、必ず得るものがあるでしょう。

親は「がっかりしない」が何より大切

大切なのは残念な結果に終わったとしても「がっかりしない」ことです。
子供にとってなによりうれしいのは親の喜ぶ顔を見ることです。そしてなにより悲しく、ショックなのは親をがっかりさせてしまうこと。内心どう思っていたとしても、絶対にがっかりした様子はみせてはいけません。あなたにはがっかりした」などという言葉は口が裂けても言ってはいけません

①の「憧れの中学校に進学でき」れば万々歳ですが、全員が合格するわけではないのが受験です。
どんなに勉強しても不合格になる場合もあるでしょう。
しかし、たとえ第一志望が不合格に終わっても、全力を出したお子さんは、中学校に入ってからその学校に不満を言うことはありません
中途半端な気持ちで学習してきたお子さんが、自分が通う学校の文句を言うのです。

わたしからは中学受験の目的を、③の「公立中に進まない」ことだけにしない、ことを提案します。

公立中に進まない(進みたくない)ことだけを目的とするのは、中学受験の目的としてはちょっと消極的に過ぎると思います。
まずは①の「憧れの中学校」を見つけるべきです。
もし、いじめなどの深刻な理由があるのであれば、公立中の越境入学も選択肢として考えましょう。

サンクコストの罠

受験校には「抑え」「滑り止め」「安全校」という枠があります。
(その学校にとっては失礼な言い回しですね)

高校受験の場合は義務教育ではありませんので、大半の生徒が「抑え」の高校を受験します。
中学受験の場合は「だめなら公立中」という選択肢を積極的に考えるべきです。

塾によってはかなりしつこく「抑え」の中学校を受験するようにすすめてきます。
中学受験専門塾の場合は特にそうした指導をします。
中学受験専門塾は、中学受験の価値を高めることが至上命題ですので、公立中のマイナス面を強調しすぎることがあります。
自分たちのコンテンツに高校受験がないのであれば、「公立中に行って高校受験でリベンジしましょう」という営業はできないのですから商売としては当然のこととも言えます。

ただ、実際にわが子を受験させる保護者の皆さんまでそうした考えに凝り固まるのは避けなければいけません。

せっかくお金と時間を投資したんだから、どこでもいいから私立中に入学させよう」という考えにとらわれないようにしましょう。

これだけつぎ込んだのだから、少しでも回収したい。
いわゆる「サンクコストの罠」(sunk cost = 埋没費用)というという概念です。
「受験するのにどれだけお金かかったと思ってるの」
これまたわが子には言ってはいけない一言です。
(塾の費用を高学年の子供に見せること自体は賛成します)

「不合格だったら公立中でいいじゃない」と口にするかどうかはさておき、最初から公立中の選択肢を除外する必要はありません。
コストと天秤にかけて、通ってもいい受験校を厳選し、「抑え」は公立中にする。とてもよい戦略だと思います。

背水の陣で受験をするのも一つの方法ですが、親は少し肩の力を抜いて駄目だったときのことを考えてもよいのではないでしょうさけ

高校受験で「リベンジ」!!

高校受験の指導では、中受経験者を良い意味で「リベンジ組」と呼ぶことがあります。
中1のときの学力は、中受経験者のほうが当然、中受未経験の生徒より格段に上です(中2で中だるみするのも中受経験者なのですが…)。
中学受験で培った学力に慢心せず、公立中に通って高校受験の準備をしっかりやれば、中受組にさきざき学力で後れをとることはありません。
むしろ高1のときの学力は高校入学組のほうが上とも言われています。
(開成の校長先生だった柳沢先生が講演でおっしゃっていたのを聞いたことがあります)

中学受験で努力した成果は、たとえ高校受験にまわっても必ず生きてくるでしょう

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【 更新予定日:2021年5月28日(金)】
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公立中の越境入学について(再掲)

公立中学校でも、特別な理由があれば学区外の中学校に進学することができます。ただ、正当な理由が必要ですので、申請にはかなり手間がかかります。
特別な理由とは
・いじめ
・きょうだいがその中学校に通っている
・身体的な問題で通学が困難
・引っ越し
・指定校に希望する部活がない
などです。最後の「希望する部活がない」という理由が、ハードルが低いように思えますが、その部活動をやる必然性がないといけないようです。

詳しくは「○○区(市) 中学校 越境入学」などと検索するか、自治体のHPを見てください。