中学受験にかかるコストはどれくらい? 時間編①

2021年5月7日

受験でかかるコストはお金だけではありません。今回は受験・進学における時間コストについて考えていきましょう。

地元の公立中なら通学時間のロスは少ない

地元の公立中に進んだら(いや都内なら、いや23区内なら、いや島嶼部を除くと…)。遠くても30分以内で自宅から中学校まで通えるのではないでしょうか。
私立中であれば、自宅⇒駅⇒電車(バス)⇒駅⇒学校、とかなり時間がかかってしまいます。
もちろん通学時間は全くの無駄な時間ではなく、「前日の復習にあてる」「英語のリスニングをしている」「友達との会話がストレス解消になる」などの効果もあるでしょう。とはいえ、通学に時間がかかれば朝起きる時間が早くなり、夜寝る時間も遅くなるかもしれません。いずれにせよ学校選びには欠かせない視点の一つとして、通学時間に目を向けてみましょう。

通学時間はどれくらい?

私立中学校のホームページによっては、在校生の通学エリアを掲載しています。50校ほど、募集要項やホームページに記載があるかどうか調べてみました。

開成(HP)
ホームページの学園案内の中に「通学区域・通学時間(HP)」というページがあります。わかりやすいですね。
通学時間60分以内が60%というのは山手線に最寄り駅がある(西日暮里駅)強みですね。納得です。

世田谷学園(HP)
1時間未満が60%とQ&Aに書かれています。1時間以上1時間半未満が35%とのこと。開成とほとんど同じですね。

鴎友(HP)
「平均通学時間は、1時間5分~10分程度です」とのことです。

明大明治(HP)
「本校生徒の通学時間は平均で約70分程度ですが、2時間かけて通っている生徒も珍しくありません」とのことです。

本郷(HP)
「こちら(HP)をご覧いただければ、本校の生徒がどの地域から通学してきているかよくわかると思います。平均通学時間が約50分で、都内を中心に埼玉県方面の生徒が多いようです」とわかりやすく書いてあります。

学習院(HP)
「都内はもちろん神奈川県,千葉県,埼玉県などの隣接する諸県から通学する生徒も多くいます.時には宇都宮や小田原から通う生徒もいますが,通学に要する時間はだいたい片道1時間程度の人が多いようです.」

武蔵(HP)
「制限は設けていません。中には1時間半以上かけて通っている生徒もいますが、中学生のときは体力的に大変なようです。健康管理に十分気を使う必要があるでしょう。50分~1時間が在校生の通学時間の平均値でしょうか」と書かれています。

この辺でピックアップするのをやめておきますが、大体1時間程度、1時間以内が半数以上。という通学時間が多いようです。
「遠くから通っている人もいます」と書いている場合は『だから遠くても受験して通ってね。安心してください』という中学校からのメッセージとも読み替えられます。
武蔵中が「中学生のときは体力的に大変なようです。健康管理に十分気を使う必要があるでしょう」と書いているのは注目してよいでしょう。武蔵中は『遠くても入学できますが、心配です』とメッセージを送っています。
数は多くありませんが、通学時間に制限がある中学校はあります。

通学に区域に制限がある私立中学校

公立中なら学区があるのは当たり前です(学区外に通う場合には書類の提出が必要です「公立中学校の越境入学について」)が、私立中でも通学区域に制限がある学校はあります

桜蔭(HP)
募集要項に「通学時間は1時間位までが望ましい」と書かれています。遠距離の受験生が試験を受けた場合、結果にどの程度の影響があるのかは不明です。

雙葉(HP)
以下のように書かれています。「入学後も保護者と同居し、通学に要する時間が通常の(特別料金を必要としない)交通機関を用いて90分以内であること」新幹線通学は不可ということです。

女子学院(HP)
雙葉と同様です。「親もとから通学することができ、通学に要する時間が、通常の交通機関(特別料金を必要としない)を用いて90分以内であること」と書かれています。

調べた中で制限があった私立中は女子校だけでした。たしかに、残念なことに電車の中は女性にとって安全な空間であるとは言いきれない面はあります。
たとえば、埼京線にうらみはありませんが、子供が通学に使って安心かというと疑問符がつきます。

国立大附属の通学区域指定について

国立大附属中は多くの中学校で通学区域を指定しています

筑波大附駒場(HP)
中学、高校ともに通学区域が指定されています。わたしの経験ではここはかなり厳密で、「きょうだいの家から通う」「合格したら引っ越す」いずれもアウトでした。受験すら認められませんでした。
通学時間は70分以内を想定していたのではないかと記憶しています。例えば町田市の西端に住んでいる方が高尾駅から通学した場合、電車(乗り換え含む)の時間は64分です。
通学区域は交通網の発達(例えば副都心線の開業など)によって変更されますので、必ず要綱を確認してください。

筑波大附(HP)
筑駒同様に通学区域が指定されています。高校は制限が特にありませんので、筑駒を受けたくても区域外で受けられなかった男子の最上位層の目標となる高校です。

お茶の水大附(HP)
通学区域が指定されています。Q&Aにかなり細かく載っていますので、見ていただくのが早いでしょう。
高校は制限はありません。(「通学に要する時間制限を本校では設けていませんが、長時間の通学は学校生活に支障をきたす恐れがあります。また、本校の登校時刻は8時なので、これに間に合う必要があります)

学芸大附属中
学芸大附世田谷中(HP) 指定地域あり。
学芸大附竹早中(HP) 指定区域あり。
学芸大附小金井中(HP) 指定区域なしですが、通学時間が1時間以内であること。と定めています。
学芸大附属の高校は指定区域はありません

都立中高一貫校の学区について

都立中高一貫10校について、通学区域は東京都全域です。都内に住んでいる実態があれば受検することができます。
ちなみに、自転車通学については、中学生は禁止、高校生は可能とのことです。
詳細は以下の通りです。

都立中高一貫校
自転車通学について

• 都立小石川中
HPに「通学時の安全を考え、中学生の自転車通学は禁止しています。」と書かれています。

• 都立桜修館中
HPに「原則として前期課程の生徒(中学生相当)については、認めておりません。後期課程の生徒(高校生相当)は、必要に応じて許可しています。 」と書かれています。

•都立立川国際中
電話して問い合わせてみました。
中学生は、学校までの自転車通学は禁止だそうです。自宅から自宅の最寄り駅までは「保護者の判断にお任せします」とのことです。
高校生になったら、学校から1.5㎞以上8㎞未満であれば自転車通学可能だそうです。

• 都立南多摩中
中学生の間は自転車通学は禁止とのことです。

• 都立三鷹中
HPに次のように記載がありました。
「前期課程の生徒は、自転車通学は認めていません。」

• 都立白鷗中
電話して聞いてみました。
「中学校は禁止です。高校は可能です」とのことです。

• 都立両国中
HPに次のように記載がありました。
「附属中学では、自転車通学を認めていません。自宅から最寄り駅までの自転車通学も認めていません。徒歩と公共交通機関を利用して通学してください。(高校からは自転車通学を認めています)」

• 都立武蔵中
電話してうかがいました。
「中学校は自転車通学を禁止しています。高校は、自転車通学していますね」とのことです。

• 都立富士中
HPに次のように記載がありました。
「中学校では安全面を考えて自転車での登校はできません。電車やバスを利用して通学してください。高校からは申請により、自転車での登校ができるようになります。」

• 都立大泉中
電話してうかがいました。
「中学生はできないです。高校生はできます」とのことです。

通学時間は無駄かどうか

その学校への思い入れとの天秤ということになると思いますが、通学に60分以上、行き帰りあわせて1日2時間を費やすにたる学校かどうかはよく考えたほうがよいと思います。
6年間通学して、その後大学受験が待っているなら、いずれ塾や予備校にも通う必要が出てくるかもしれません。通学路の途中に通わせたい塾や予備校はあるでしょうか
お金は稼げますが、時間は稼げません。1日24時間のうちの2時間をどう使うか、ここは考えどころです。

地元の中学校に通ったら通学時間はどれくらいでしょう。公式なデータが得られませんでしたが、23区に在住なら遠くても20分はかからないのではないでしょうか。もちろん通学時間が短いからといって時間を有意義に使えるとは限りません。ただ、ここは一考の余地があります。

小説家の青山七恵さんが、小学生のころ、長い通学時間で目的もなく、なにもない空間を見た経験が創作の原点である。なんていう随筆を書いていました(「かげろうさん」『ベストエッセイ2009 父娘の銀座』所収)。「なにもない」空間をみて思索にふける時間は間違いなく子供にとって必要な時間ですが、今の子供は長い通学時間がスマホをみているだけの時間にすり替わっているかもしれません

いずれにせよ、中学入試の場合は通学時間や通学経路については事前に検討するべきでしょう。
時間が許すなら、朝、登校時間と同じ時間に同じ経路で学校まで行ってみることをおすすめします。

公立中学校の越境入学について

公立中学校でも、特別な理由があれば学区外の中学校に進学することができます。ただ、正当な理由が必要ですので、申請にはかなり手間がかかります。
特別な理由とは
・いじめ
・きょうだいがその中学校に通っている
・身体的な問題で通学が困難
・引っ越し
・指定校に希望する部活がない
などです。最後の「希望する部活がない」という理由が、ハードルが低いように思えますが、その部活動をやる必然性がないといけないようです。

詳しくは「○○区(市) 中学校 越境入学」などと検索するか、自治体のHPを見てください。

ただ、越境入学についてはあまりおすすめしません
実際に家の近所の中学校が荒れに荒れていて、パトカーがしょっちゅう来るとかではない限り、学区の中学校に通うのが正解だと考えます。
また、学力が高い公立中学校に通えばよいかというと必ずしもそうではありません。学力が高いといっても入学試験のない公立中の学力は大差ありません。それにもし優秀な生徒ばかり集まっている公立の中学校があったら、そこで内申(通知表の成績)を取るのはなかなか大変ですよね。

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【 更新予定日:2021年5月14日(金)】

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